大阪・関西万博2025のシグネチャーパビリオン「null²(ヌルヌル)」で使用されたアバター技術「Gaussian-VRM」が、オープンソースとしてGitHubで公開されました。この技術は、筑波大学大学院博士課程の近藤生也氏らが開発したもので、スマートフォンで撮影した人物を短時間で3Dアバター化できる点が特徴です。

Gaussian-VRMは、論文「Instant Skinned Gaussian Avatars for Web, Mobile and VR Applications」で発表された技術です。簡単な操作で高品質なアバターを生成できます。スキャンには、最近のトレンドであり品質と高速処理が特長のガウシアン・スプラッティングを採用。スマートフォンアプリ「Scaniverse」で全身をスキャンすると約30秒ほどで3Dアバターが完成します。生成からアニメーション表示までの全処理がブラウザ上で完結し、特別なソフトを必要としません。
アバターのデータ形式には、汎用アバターフォーマットVRMをベースにした独自のポータブルなアバターフォーマット「Gaussian-VRM(.gvrm)」を開発・採用しています。これにより、JavaScriptを用いて動作制御が可能で、WebアプリやVRコンテンツなどへの応用が容易です。アバター生成から活用までを一貫してブラウザ環境で実現できる仕組みとなっています。


この技術は、落合陽一氏がプロデュースを担当した大阪・関西万博のパビリオン「null²」で活用されました。「null²」は最も満足度の高かったシグネチャーパビリオンにも選ばれるなど、最も注目を集めたパビリオンの一つです。来場者は、自身の姿をもとにしたデジタルな分身「Mirrored Body®(ミラードボディ)」を体験できました。
オープンソース化に際し、開発を担当した近藤生也氏はこうコメントしています。
自信をもてるクオリティの技術になったからです。2024年の12月あたりはまだ gaussian-vrm に欠陥が多くて先が見えなかったので、オープンしても埋もれるだろうと思い、とても考えられませんでした。いざやりきってみたら、イメージ通りで非常に楽しいモノができて、これはオープンにしても埋もれたりもしないだろうし、より多くの方に使ってもらえた方が人類にも自分にもプラスになると思い、オープンソースで公開する運びとなりました。
これまで、ほとんどのアバター生成の研究 は、NVIDIA や MPI (マックスプランク) に依存することが多く、いずれも商用不可でした。そのため、商用利用可なアバター生成技術に非常に価値があることを知っていて、自分はそれらを回避することにこだわって開発して最終的にオープンソース (商用可) にしました。自分も今回、オープンソースのライブラリをいくつか使わせていただいており、その開発者の皆さんには感謝が絶えません。
この技術のオープンソース化により、Gaussian-VRMは広範な分野での利用が見込まれます。ソーシャルメディアやメタバースアプリへの統合も可能で、スマートフォンから現実の外観を即座に3Dアバターへ変換できる環境が整いつつあります。

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